消防士の活躍

雑誌「Allo dix huit」の表紙 © Allo dix huit Le magazine des pompiers de Paris, hors-série Mai-Juin 2019

パリ消防旅団の介入 © Allo dix huit Le magazine des pompiers de Paris, hors-série Mai-Juin 2019

ジャン・フランソワ・ラニョ (訳:河野俊行)

パリ・ノートルダム大聖堂では、尖塔の修復を含む大規模な修復工事が始まっており、2018年末には足場の設置が始まっていた。

2019年4月15日、大聖堂の屋根焼失

火元は屋根の上に立つ尖塔の足元部分であったと考えられている。まず18時18分に最初の警報が鳴ったが、その警報の意味するところが正確に理解されることはなかった。はっきりと火災であると認識されたのは30分後の18時50分、全体警報が作動してからであった。

数多くの写真により、災害の急速な進展を追うことができる。

最初の消防隊員が到着したのは午後7時。彼らは、屋根裏を襲っていた火はもはや制御不能であること、また鎮圧作業が必要であることを直ちに理解し、特に心配されていた北塔の鐘楼への延焼を防ぐことに成功した。22時30分には鎮圧が宣言され、次いで鎮火宣言が出されたときには翌日深夜2時になっていた。

この作業には約600人の消防士が出動した。

この数時間にわたる消防士たちの闘いはよく知られており、いくつかの記録や報告書でも取り上げられている。彼らが成功裏に鎮火できたのは、パリ消防旅団の完璧な軍事的組織と、ゴシック様式の建物という迷宮 (訳注:中世の建造物であるノートルダム大聖堂の通路は狭く、建物内部の動線は複雑である) の中で道を切り開いていった消防士たちの高いプロ意識に加えて、いくつかの要因があった。それを改めてここで確認しておきたい。

  • ドローンを用いて上空からの状況を確認したほか、地上ロボットを使って、直接アクセスするには危険すぎる場所に消火用ホースを導けた。
  • 消防隊の製図技師たちがすばやく描いたスケッチのおかげで、デジタルによる作図よりも早く、消火計画の検討に有用な合成図を直ちに作成することができた。
  • セーヌ川が近くにあり、必要な水が確保できた。
  • 消防隊員たちは、定期的な訓練を通じて、建物と所蔵されている文化財を熟知していた。

芸術作品は、建物の所有者である文化省の担当者と、直ちに現場に到着した司教館の職員によって救われた。消防士が消火活動をしている間に文化財の避難が始まり、実際これらの文化財はすべて救出され、速やかに安全な場所へ移された。

消防士が火災発生時に描いたスケッチ © Allo dix huit Le magazine des pompiers de Paris, hors-série Mai-Juin 2019

消防士が火災発生時に描いたスケッチ © Allo dix huit Le magazine des pompiers de Paris, hors-série Mai-Juin 2019

火災状況のビジュアル化 © Allo dix huit Le magazine des pompiers de Paris, hors-série Mai-Juin 2019